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この度の平成30年7月豪雨(西日本豪雨)災害で亡くなられました方にお悔やみ申し上げますとともに、被災されました方にお見舞い申し上げます。また猛暑の中、自衛隊、医療関係者、行政、ボランティア等の皆様のご活動に敬服致します。
熊本地震の時も医療救護活動をされました熊本赤十字病院リハビリテーション科副部長 整形外科医師の細川浩先生が、平成30年7月11日から倉敷保健所の会議体の倉敷地域災害保健復興連絡会議(Kurashiki Disaster Recovery Organization, KuraDRO)に日本赤十字社の医療コーディネーターとして支援活動をおこなわれてきました。その現状報告文です。ご本人のご許可を頂き掲載しております。 |
熊本赤十字病院の細川浩です。
岡山でのDVT対応についてご報告申し上げます。
7月10日に熊本を出発し、7月15日夜に倉敷から熊本に帰って参りました。
今回の西日本豪雨における岡山の倉敷市保健所と備中保健所管轄の対応としては『倉敷地域災害保健復興連絡会議(Kurashiki Disaster Recovery Organization, KuraDRO)』を本部として、医療のみならず、保健や福祉の分野の支援を横断的に実施されておりました。そこにはDMAT,日本赤十字社, JMAT, JRAT, AMATをはじめとする主要災害救護団体やDHEAT、日本災害医学会、地元や支援の保健師や看護師、倉敷市をはじめとする岡山県、中国各県、厚労省まどの行政職員が参集して協働しておりました。
さて、今回のエコノミークラス症候群をはじめとする静脈血栓症予防啓発活動(DVT活動)は、川崎医科大学循環器内科 上村史郎教授と同 心臓血管外科 種本和雄教授のお話合いのもと、上村教授が取りまとめをされることとなったとお聞きしております。
そのKuraDRO本部で私(細川医師)は日本赤十字社の災害医療コーディネートチームのコーディネーターとして活動してきました。KuraDROは前述のように保健医療福祉支援の活動拠点本部となるため、DVT対応で上村教授も、KuraDRO会議には参加されておられました。
そしてKuraDROに参集されました岡山県医療救護班の一部がDVT活動を上村教授のもとでDVTチームとして実施されました。私がその場におりましたので(熊本地震のKEEPプロジェクトの経験もあり、掃本先生の調整の上)DVTリエゾンとして岡山のDVT活動に助言させて頂く形となりました。
急性期DVT活動としては「DVT予防の普及啓発活動」をメインとして、避難所でのDVT予防の啓発と弾性ストッキングの配布着脱指導をDVTチームとして支援して頂きました。弾性ストッキングは孟 真先生(横浜南共済病院 心臓血管外科 部長 日本静脈学会災害対策委員会副委員長)が調整されました。熊本に備蓄しておりました分の弾性ストッキング320足は私が現地入りする際に車でKuraDROに搬入致しました。
7月16日までに全避難所に巡回を終了しております。
今後、7月16日まで岡山県医療救護班として行われてきましたDVT活動は、主体を保健師および災害支援看護師の方々に引き継ぐ形(もちろん医療救護班が引き続きDVTの予防啓発活動をふくめて活動の一部として継続とることは言うまでもありません)になります。7月17日以降は、岡山県医療救護班はKuraDROの指示をうけて活動する予定とのことです(DVT対応班としては一旦終了)。
DVTに関する質問、患者の受け入れに関する対応は、常日頃から川崎医科大学様が使用されていますホットラインの番号をKuraDROチームに公開することによって、もしも二次的健康被害の発生等があれば上村教授とKuraDROが調整される協力体制が確立されました。
エコー検診を含む中長期的な対応につきましては、KuraDROと様々な関係機関と情報交換しながら検討されるとのことです。
わたくし(細川医師)が平成26年熊本地震の時に経験しました熊本地震血栓塞栓症予防プロジェクト(KEEPプロジェクト)では熊本県からの依頼で錦の御旗を掲げた状況でありましたが、今回はKuraDROが地元の川崎医科大学等の医療施設とわたくしのように県外からの支援組とをうまく調和させ、特に川崎医科大学上村教授と種本教授におかれましては、DVT対応の情報を1本化され、災害の専門家と協働歩調をとりながら、災害急性期を乗り切ることができたのではないかと思います。指示系統が一元化された組織での活動において、情報を共有できました。
少なくとも急性期に肺血栓塞栓症の災害関連死がゼロであったことはひとつの成果かと考えております。
以上、ご報告申し上げます。 |
細川 浩(熊本赤十字病院 リハビリテーション科副部長 整形外科) |
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